カテゴリ:読書日記(その他の科学)( 61 )

負のフリン効果

知能指数(IQ)のスコアが100年にわたって上昇し続けているという現象は「フリン効果」(注1)と呼ばれている。IQに関する解説書(注2)には次のように紹介されている。

以下、引用 p.180
1987年のフリンの論文は衝撃的であった。14ヵ国のIQのデータは1世代で5~25点も上昇しているという。多くの研究者のデータをまとめたレビュー論文である。フリンは35ヵ国、165名の研究者に手紙を出して、データの提供を求めた。それをフリンが整理したものである。
引用、終わり

「人間が少しずつ進化している」と直感する人もいるかもしれないが、心理学者の大勢ではない。前掲の解説書にはつぎのように記述されている。

以下、引用 p.184
もちろん、我々は1世代くらいでは賢くならない。遺伝子も変化しない。それでもIQはどんどん上昇する。つまり、IQの値を決定するのは遺伝子ではなく環境である。知能テストが測定しているIQの値も疑わしい。なんらかのアーティファクト(人為的な間違い)が混入しているのではないか。
引用、終わり

心理学者はどう考えるかわからないが、「進化はしないまでも、教育機会などの環境を通じてすこしずつ賢くなっているのではないか」と思っていた人が多いだろう。(私もそう思っていた。)

ところが最近「フリン効果」が終わって逆の現象が起きていているらしい。「負のフリン効果」と呼ばれている。こちらの記事参照。なぜ「負のフリン効果」が起きるのかはっきりしないようだが、私は真先にパソコン、スマホさらにテレビの影響を思いついた。老人になった私でさえ、どんどん字が書けなくなっている。子どもたちへ影響は計り知れないだろう。記憶学者の本(注3)に次のような記述があった。

以下、引用 p.137~
一般的にメディアは赤ちゃんの発達に影響を与えないと考えられてきた。ところが実際には、この産業についてのある大規模研究で好ましくない結果が出ている――2007年、ワシントン大学のフレデリック・ジマーマンとチームは赤ちゃんにテレビを見せると、言語発達にかなりの悪影響を及ぼすことを発見した。彼らは幼児をもつ1008名の親を招き、子どものメディアを見る習慣についてたずねた。さらに、子どもの言語の発達状態を測定するマッカーサー乳幼児言語発達質問紙を簡略化したものに記入させた。このふたつの調査をまとめたところ、八~十六ヵ月の幼児では、一日にベビーメディアを見る時間が一時間増すごとに、知っている言葉の数が六~八個減ることがわかったのだ。
 ベビーメディアは効果がないことは、学会や専門組織によりしっかりとした根拠が出されているため、主要な小児科医団体はこの問題に対し、明確なガイドラインを示してきた。たとえば、2011年、米国小児科学会(APP)は、二歳以下の子どもには画面をまったく見せるべきではないと明言している。これはiPadもiPhoneもラップトップもテレビもだめという意味だ。
引用、終わり

最近「魚をよく食べる人のIQの値が高い」という研究結果が話題になっている。この結果から「魚を食べるとIQの値が上昇する、賢くなる」というばかばかしい記事を多数見かける。魚食は健康にはよいだろうが、知能指数が向上するというのは、相関関係と因果関係の混同(注4)だろう。
前掲のIQに関する解説書(注2)を引用しておく。

以下、引用 p.187
相関研究の戒めとして、アイスクリームの売上高と児童の溺死という例がある。アイスクリームの売り上げと児童の溺死に0.6の相関があったとしよう。アイスクリームが売れたから児童が溺死するだろうか。それとも、児童が溺死するからアイスクリームが売れるだろうか。因果関係の方向はどちらも考えられるが、どちらも間違いである。気温が上昇するからアイスクリームが売れるし、水遊びに出かける児童が増えて溺死も増える。本当の原因は気温である。
引用、終わり

(注1)性選択は進化に大きい影響を及ぼすだろうが、ここで述べるのは「不倫効果」ではない。J.フリンとうニュージーランドの学者が提唱したためそう呼ばれている。

(注2)村上宣寛「IQってホントは何なんだ?」2007 日経BP
IQに関する偏見に満ちた本は無数にあるが、まともな本はほとんどない。この本はめずらしいIQについての初心者むけの解説書。

(注3)ジュリア・ショウ著(服部由美訳)「脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議」2016講談社
この本の原題はThe Memory Illusionで、内容も記憶に関する幅広い話題に及び面白い。なぜか日本語訳には奇妙なタイトルがつけられている。表紙のイラストも内容を連想させない購買意欲を削ぐものだ。

(注4)一般にAとBに相関関係があった場合、つぎのケースが考えられる。
①事象Aと事象Bに因果関係がある。どちらが原因でどちらが結果なのか、相関関係からは決定できない。
②事象Aと事象Bは相互に原因でもあり、結果でもある。制御工学のフィードバックという言葉がよく使われる。
③事象Aと事象Bに共通の原因があり、AとBはその結果である。
④無関係。あるいは無視できるほど些細な関係。相関関係は単なる偶然。
これくらいのことは研究者や科学記事をかくジャーナリストは百の承知のはず。それにもかかわらず、相関関係だけを根拠に特定の因果関係を主張する者は、嘘つきだと思った方がよいだろう。



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by takaminumablog | 2018-11-28 13:25 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

直立二足歩行

最近読んだ本で感じたことを書きます。

ヒトの外見を他の霊長類と比較すると、直立二足歩行すること、体毛(羽毛)が生えていないことの2点が目に付く。フランス・ドゥ・ヴァールの著書(注1)に次の記述がある。

人間という種の最も簡潔な定義を巡るプラトンとディオゲネスの議論に端を発するかもしれない。プラトンは、人間とは羽毛に覆われておらずしかも二足歩行する唯一の生き物である、と定義した。だが、この定義には難があることが判明した。ディオゲネスが羽をむしったニワトリを講義室に持ち込み、「ほら、プラトンの人間だ」と言って放したのだ。それ以後、その定義には「幅の広い爪のある」という言葉が付け足された。(p.166)

私の世代は直立二足歩行こそが人間のはじまりだと教わってきた。日本ではロボットを作る場合も、まず二足歩行を目指している。ネットで検索してみると「直立二足歩行こそ,最も人類的な特徴と考えられており,骨格などもそれに適合した構造になっている。・・・大後頭孔は頭蓋底部中央に水平に位置するようになり,脊柱が頭を支えやすくなっている。直立二足歩行の結果,手が自由になって,道具使用が可能となり,今日の人類文化が生み出されるにいたった。」(ブリタニカ国際百科事典小項目)」という記述が見つかる。しかし、これは誇張(または誤り)のようだ。

フランス・ドゥ・ヴァールの前掲書から引用
私たちは人間の二足歩行をやたらと高く評価するが、ニワトリから、ぴょんぴょん跳ねるカンガルーまで、二本足で動く多くの動物は無視している。サバンナでは場所によっては、ボノボは背の高い草の間を、人間のように堂々たる足取りでかなりの距離を直立歩行する。じつは、二足歩行は以前言われていたほど特別ではないのだ。(p160)

大隈典子は、次のように明確に述べている。(注2)
したがって、「ヒトは二足歩行をするようになったことで、大きな脳を支えることができるようになった」という進化の説明は正しくないと思われます。実際に、それほど大きな脳を持たなかったホモ・ハリビスの化石に付随して簡単な石器がみつかっているので二足歩行をしたこと自体がヒトの脳の大型化をもたらした原因ではないと思われます。(p.229)

それではヒトへの進化をもたらしたことは何であろう?

フランス・ドゥ・ヴァールの前掲書の監訳者である松沢哲郎の著書(注3)によると、「生まれたばかりのときから、母親とあかんぼうが離れていて、あかんぼうがあおむけに寝ている、そうしたサルはいません。人間だけです。」ヒト以外の霊長類は,子どもが親にしがみつき、親は抱かない(ワオキツネザルなど)か、子どもが親にしがみつき、親も子どもを抱く(ニホンザル、チンパンジーなど)のどちらかであるという。(p.101~p.102)
たしかに、ヒトには体毛(羽毛)がないので子どもが親にしがみつくことは困難だろう。子どもが親にしがみつかないで、親が子どもを抱いたり仰向けに寝かせたりすることの重要性をこのように説明している。
ヒトに体毛が不要になったから無くなったのか、体毛がないことが親と子どもの関係を変化させたのかは分からないが、ヒトに体毛がないことは重要な事柄かもしれない。

(注1)フランス・ドゥ・ヴァール著、松沢哲郎監訳、柴田裕之訳「動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか」紀伊国屋書店 2017
 この本は大部ではあるが、読みだした止まらなくなるほど楽しい。初心者にもわかるような記述になっている。
(注2)大隈典子「脳の誕生―発生、発達、進化の謎を解く」ちくま新書 2017
おもしろいテーマではあるが、私のような初心者にはかなり難解。
(注3)松沢哲郎「心の進化をさぐる」2017 NHK出版
著者の飼育するチンパンジーの子ども(オス)、アユムの記憶力が人間よりも優れていることを実証したことは名高い。この本に解説がある。注1の本にも紹介されている。
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by takaminumablog | 2018-01-15 15:57 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

ジュリアン・ハヴィル著【松浦俊輔訳】2009「世界でもっとも奇妙な数学パズル」青土社

タイトルは「世界でもっとも奇妙な・・・」となっているが、有名な多くのパラドックスの解説が載っている。
シンプソンの逆理(集団を2つに分けた場合にある仮説が成り立っても、集団全体では正反対の仮説が成立することがある)、モンティホール問題、エレベータのパラドックスなど。初めて聞く時にはとても知的興奮を覚える。しかし、中には数学を勉強した人は必ず知っていなければならないカントールのパラドックスがあるかと思えば、とても難しいい数学に関する話題があったりして飛ばして読みたくなるものも含まれている。
上に上げたパラドックスや問題の名前を初めて聞く人にはお勧めの本。
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by takaminumablog | 2009-08-29 10:06 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

太田朋子2009「分子進化のほぼ中立説 偶然と淘汰の進化モデル」講談社ブルーバックス

進化論について一般向けに解説した本は多数出版されている。しかしトンデモ本であったり、トンデモ説をそう断ることもなく紹介してあったりして、一般人が進化論に関する正しい知識を吸収するのは難しい。その中で、この本は一般向けに書かれた優れた解説書だ。そのかわりコンパクトにまとめられていて素人にはとても難解である。この本を読む前に少なくても次の本は読んでおかねばならない。
木村資生1988「分子進化を考える」岩波新書
著者は木村資生博士の門下生で中立説を発展させて「ほぼ中立説」を確立した方だそうだ。
木村資生博士が中立進化論を発表してから2008年で40周年となったらしい。(中立進化論がNature誌に1968年2月17日に掲載された)そろそろわれわれ一般人も分子進化の中立説を理解してもよいころだろう。
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by takaminumablog | 2009-06-14 15:56 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

人工冬眠

市瀬史2009”「人工冬眠」への挑戦―「命の一時停止」の医学的応用”講談社ブルーバックス
ビジネスの世界では目立った活動がないことを「冬眠していた」などと冗談をいうが、冗談ではなくなりつつあるらしい。
大胆な予想を言わせてもらえば、今後数年以内に、何らかの形の“人工冬眠”は実現する恥です。おそらく最初は、重症の外傷患者を救う最終手段の一つとして急速強制冷却と全身麻酔と筋弛緩と人工呼吸の併用という形で行われるものとなるでしょう。
そして10~20年以内に冬眠のメカニズムが完全に解明されると思います。そうなれば人工呼吸や全身麻酔のどの医学的補助手段を使わない人工冬眠も、単なる夢から手の届く可能性の一つに変わるでしょう。「今年の冬は寒そうだから、カプセルの中で人工冬眠して過ごそう」という選択ができる日も、そう遠い未来ではなさそうです。

冬眠中は代謝が抑制されるため寿命を延ばす効果があるらしい。つまり冬眠中はあまり年を取らないということだ。われわれの孫の世代くらいになると「不景気で就職先も見つからないからしばらく冬眠しよう」なんていう時代になるのだろうか?
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by takaminumablog | 2009-04-30 16:33 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

渡部潤一2008「最新・月の科学-残された謎を解く」NHKブックス 

1969年7月20日(日本時間21日)と言っても覚えている人はいないだろう。こちらの記事参照。皆が忘れてしまう位、昔の話だ。「あれから長い月日がたち月の科学もさぞ進歩し、どのようにして人間が滞在するのか位が課題だろう」と漠然と考えていた。しかし、それは大間違いだった。この本を読むと、月については基本的なこともほとんど分かっていないということが理解できる。例えば月の表と裏の相違はどうしてできたかすら分かっていないらしい。
 月の自転周期は 地球を周回する公転周期と完全に一致していて、地球から見える側(表)は常に一定である。
これは起きあがりこぼしを考えると理解しやすい。起きあがりこぼしのお尻は頭に比べて相当重くなっている。そのため、お尻が地球の重力に引かれるので、お尻を下にして(つまり地球に向けて)立ち上がった状態がもっとも安定である。実は月の表側は、裏側に比べて、やや重くなっている。つまり月の引力重心が天体の形状重心よりずれている。そのため、起きあがりこぼしのように、月はそのお尻を(つまり表側を)地球に向けて安定した状態になった末に、そのまま止まってしまったと考えられる。
ところで、探査機によって撮影された月の裏面には、ほとんど海といえるものがない。これを月の表と裏がまったく異なっているという意味で、二分性あるいは二面性と呼んでいる。

最大の謎は、表と裏で大きく異なる、月の二分性がどのようにしてできたか、である。月は大規模に融解したマグマの大洋から白くて薄い斜長石が浮いて表面を覆ったと考える研究者が体勢を占めているが、その厚さが表で薄く裏で厚い理由は今もって解明されていない。

この本は月について何が分かっていないかを理解するのによい本だ。
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by takaminumablog | 2008-07-21 08:24 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

再び「地震予知の科学」について

中国・四川大地震の後、「地震予知の科学」の書評が目に留まった。私が以前に書いたブログはこちら。 正直に言ってあきれた。評者は『大規模な地震は予知可能になった。ただし、「×月×日×時に震度×の地震がある」とまではいかないけれども。』と書いている。次の点を確認しておきたい。
(1)この本では「予知」という言葉を普通の日本語とは異なる意味で使っている。普通の日本語でいうところの予知はまだ不可能。
(2)地震には「プレートの沈み込みによってプレート境界で発生する地震」と「大陸プレートの内部で発生する地震」の2種類がある。岩手・宮城内陸地震は後者。「プレートの沈み込みによってプレート境界で発生する地震」についてある程度発生の仕組みが分かっってきた。しかし大陸プレートの内部で発生する地震については長期評価さえ大きな誤差を伴う。
(3)プレートの沈み込みによってプレート境界で発生する地震の一つである東海地震の予知を目指して「プレスリップ」の観測をしているが、「大地震発生前にプレスリップが検知できる」というのは仮説でしかない。そもそも「東海地震」だけが発生間近という説も誤りであった。正確な数字は知らないが40年間に1600億円を使ったらしい。(だれか正確な数字をご存知の方はコメントしていただきたい)私は無駄だったと思うが、異論もあると思う。(ほとんど車が走らない道路に比べれば微々たる物かもしれない)

中国は1975年に「地震予知」を成功させたことがある。中国は「予知」に肩入れしすぎたのではないか。日本も(地震メカニズムの研究は重要だが)「予知」が可能という前提は捨てるべきだ。
評者は「最近の天気予報はよく当たる」と書いているが本当だろうか。気象庁の公式見解のこちらを参照して欲しい。
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by takaminumablog | 2008-06-17 11:45 | 読書日記(その他の科学) | Comments(3)

時間のある人にお勧めの「時間」に関する本

「時間とは何か」というテーマについて考え出すといくら時間があっても足りない。時間に関する本は多いが、科学的な裏づけのない哲学にはまったく興味のない私にはチンプンカンプン。そんな中でこの本は出色。物理学の裏づけを持った時間論の解説。私が過去の読んだ時間に関する本の中で「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学」中公新書と比肩するくらいの名著。ぜひ皆にお勧めしたい。ただし理科系の人でないと難しいかな?
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by takaminumablog | 2008-06-07 16:53 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

進化論

中原英臣、佐川峻2008「新・進化論が変わる ゲノム時代にダーウィン進化論は生き残るか」講談社ブルーバックス
ゲノム時代になり進化論に何か面白い発見でもあったのかと思い読み出してみた。「ヒトの遺伝子の三分の一はウイルスのかけら」という話には「なるほど」と思ったが、進化論については新しい話は何もでてこないので失望した。この本は内容に偏りがありすぎて進化論全体についておさらいするにも向いていない。一番駄目なのは「進化の主体は個体か種か」という問題を今も科学者が論争中であるかのように解説している点だ。だいたい「進化の主体が種である」と奇妙な主張をした今西錦司についても不要な言及が目立つ。今西進化論などといわれるが、あれは(思想かもしれないが)科学ではないし、日本以外ではまったく評価されていない。(霊長類の研究で著名な今西錦司が主張したため、日本の科学界に多大な悪影響を与えた。(例えば桑村哲生著「性転換する魚たち― サンゴ礁の海から ―」参照)
 著者たちはウイルス進化説を主張しているらしい。しかしそれを裏付ける根拠はどこにも示されていない。単なる仮設だ。ウイルス進化説との相性がいいからといって、「進化の主体が種である可能性もある」と誤解させるような解説は困る。
 くだらないことを書きすぎページ数が増えたためか、進化論に関する重要なことは簡単に書かれているだけ。
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by takaminumablog | 2008-05-07 16:16 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

りこうなハンス

オスカル・プフングスト著 秦和子訳2007『ウマはなぜ「計算」ができたか-「りこうなハンス効果」の発見』現代人文社
 昨年の流行語にKY(空気を読め)というのがあった。いやな言葉だ。言いたいことがあれば言葉で表現するのが、(ウマは別として)人間のコミュニケーションの基本だ。「KYを期待するような文化はグローバル競争の中で消滅するに違いない」と思う。
 ところで、「空気を読む」というと、賢馬ハンスを思い出す。(ハンスを知らない人は賢馬ハンスでWikipediaを検索してください。何ができたかについては、下の引用を参照。英語で検索する場合はClever Hans)
表題の原著はなんと1907年に出版された。100年経った現在でも面白い内容である。著者が自ら馬の役目をつとめて質問者が思った数を当てることができたという話には感心した。社会心理学を学ぼうとする人にはもちろん、科学の道に進もうという人にはぜひ一読をお勧めしたい。
ハンスがやってのけるのは(第一章参照)、まず例えば「3足す2はいくつか?」と聞かれると即座に右前足を少し前に出して軽く叩き始め、5打叩くと足を元の位置に戻すこと。また「赤はどれか?」と訊ねられるとあらかじめ並べてあった色布の列から赤い布を選び出し口にくわえて持って来、「右はどっちか?」と聞かれると頭を(質問者にとっての)右に一振りして示すことです。かようなことをするようになったのは、飼い主によれば、ニンジンやパンという褒美(強化子・強化刺激)を用いつつ、児童を指導するように学ばさせたからだというのです。なんとハンスは、サーカスや見世物での「りこうな」イヌや他のウマとは違って、教師不在中でさえ正しく答えるのです-この事実はハンス事例の一大特徴です。

訳者のことば(p.346)
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by takaminumablog | 2008-01-10 09:23 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)