オスカル・プフングスト著 秦和子訳2007『ウマはなぜ「計算」ができたか-「りこうなハンス効果」の発見』現代人文社
昨年の流行語にKY(空気を読め)というのがあった。いやな言葉だ。言いたいことがあれば言葉で表現するのが、(ウマは別として)人間のコミュニケーションの基本だ。「KYを期待するような文化はグローバル競争の中で消滅するに違いない」と思う。 ところで、「空気を読む」というと、賢馬ハンスを思い出す。(ハンスを知らない人は賢馬ハンスでWikipediaを検索してください。何ができたかについては、下の引用を参照。英語で検索する場合はClever Hans) 表題の原著はなんと1907年に出版された。100年経った現在でも面白い内容である。著者が自ら馬の役目をつとめて質問者が思った数を当てることができたという話には感心した。社会心理学を学ぼうとする人にはもちろん、科学の道に進もうという人にはぜひ一読をお勧めしたい。 ハンスがやってのけるのは(第一章参照)、まず例えば「3足す2はいくつか?」と聞かれると即座に右前足を少し前に出して軽く叩き始め、5打叩くと足を元の位置に戻すこと。また「赤はどれか?」と訊ねられるとあらかじめ並べてあった色布の列から赤い布を選び出し口にくわえて持って来、「右はどっちか?」と聞かれると頭を(質問者にとっての)右に一振りして示すことです。かようなことをするようになったのは、飼い主によれば、ニンジンやパンという褒美(強化子・強化刺激)を用いつつ、児童を指導するように学ばさせたからだというのです。なんとハンスは、サーカスや見世物での「りこうな」イヌや他のウマとは違って、教師不在中でさえ正しく答えるのです-この事実はハンス事例の一大特徴です。 訳者のことば(p.346)
by takaminumablog
| 2008-01-10 09:23
| 読書日記(その他の科学)
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