井上栄2006「感染症」中央公論(中公新書)
この本は「なぜ日本人SARS感染者がゼロだったか」という説明から始まる。真っ先に思いつく説明は、他の東南アジアの国とは異なり人の交流が少ないのだろう、というものだ。しかし「米国から中国・香港・台湾への旅行者は約230万人であり、米国人の患者は27人いた。いっぽう日本人は年間310万人いるのに、患者はゼロだった。これは偶然のこととはいえないだろう。「偶然」とはいわず、徹底的にその理由を考え、あらゆる可能性を考慮しておくことが、将来役に立つことにもなる。」(p.6) という書き出しで著者の考察が始まる。この考察は海外旅行をしようとする人に大変ためになる。ホテル室内で履くためのスリッパを持参しよう。ウェットティッシュを持参し、テレビドラマの名探偵モンクのように、握手した後やドアのノブに触ったあとは手を消毒しよう。レストランでパンを食べる前に、手を消毒しよう。・・・・ 本の最後は「日本人のコンドーム文化」である。著者の主張は「日本人のコンドーム使用率は非常に高い。これがエイズ予防に役立っている。安易にピルに移行するのではなく、コンドーム文化を大切にしよう」というものだ。そういえば池田信夫Blog(The White man’s Burdenの書評に次の記述があったのを思い出した。 エイズ対策資金の大部分はエイズ治療薬に使われるが、これは患者の発症を数年おくらせる効果しかない。しかも感染者は発症するまでの間にHIVをまき散らすので、治療薬はエイズ感染を悪化させるの である。コンドームや性教育などによって感染を予防する対策は、治療薬よりはるかに安価で効果が高いが、アメリカやカトリック系の国はコンドームに開発援助が使われることをきらう。こうした愚かなキリスト教道徳のおかげで、毎年何十億ドルもの援助が浪費されているのである。 コンドーム文化を大切にするだけではなく、日本が積極的に途上国に積極的に広めていくべきだろう。 皆様、気楽に読めてためになるこの本をどうぞ。
by takaminumablog
| 2007-02-09 10:09
| 読書日記(環境問題)
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