直立二足歩行

最近読んだ本で感じたことを書きます。

ヒトの外見を他の霊長類と比較すると、直立二足歩行すること、体毛(羽毛)が生えていないことの2点が目に付く。フランス・ドゥ・ヴァールの著書(注1)に次の記述がある。

人間という種の最も簡潔な定義を巡るプラトンとディオゲネスの議論に端を発するかもしれない。プラトンは、人間とは羽毛に覆われておらずしかも二足歩行する唯一の生き物である、と定義した。だが、この定義には難があることが判明した。ディオゲネスが羽をむしったニワトリを講義室に持ち込み、「ほら、プラトンの人間だ」と言って放したのだ。それ以後、その定義には「幅の広い爪のある」という言葉が付け足された。(p.166)

私の世代は直立二足歩行こそが人間のはじまりだと教わってきた。日本ではロボットを作る場合も、まず二足歩行を目指している。ネットで検索してみると「直立二足歩行こそ,最も人類的な特徴と考えられており,骨格などもそれに適合した構造になっている。・・・大後頭孔は頭蓋底部中央に水平に位置するようになり,脊柱が頭を支えやすくなっている。直立二足歩行の結果,手が自由になって,道具使用が可能となり,今日の人類文化が生み出されるにいたった。」(ブリタニカ国際百科事典小項目)」という記述が見つかる。しかし、これは誇張(または誤り)のようだ。

フランス・ドゥ・ヴァールの前掲書から引用
私たちは人間の二足歩行をやたらと高く評価するが、ニワトリから、ぴょんぴょん跳ねるカンガルーまで、二本足で動く多くの動物は無視している。サバンナでは場所によっては、ボノボは背の高い草の間を、人間のように堂々たる足取りでかなりの距離を直立歩行する。じつは、二足歩行は以前言われていたほど特別ではないのだ。(p160)

大隈典子は、次のように明確に述べている。(注2)
したがって、「ヒトは二足歩行をするようになったことで、大きな脳を支えることができるようになった」という進化の説明は正しくないと思われます。実際に、それほど大きな脳を持たなかったホモ・ハリビスの化石に付随して簡単な石器がみつかっているので二足歩行をしたこと自体がヒトの脳の大型化をもたらした原因ではないと思われます。(p.229)

それではヒトへの進化をもたらしたことは何であろう?

フランス・ドゥ・ヴァールの前掲書の監訳者である松沢哲郎の著書(注3)によると、「生まれたばかりのときから、母親とあかんぼうが離れていて、あかんぼうがあおむけに寝ている、そうしたサルはいません。人間だけです。」ヒト以外の霊長類は,子どもが親にしがみつき、親は抱かない(ワオキツネザルなど)か、子どもが親にしがみつき、親も子どもを抱く(ニホンザル、チンパンジーなど)のどちらかであるという。(p.101~p.102)
たしかに、ヒトには体毛(羽毛)がないので子どもが親にしがみつくことは困難だろう。子どもが親にしがみつかないで、親が子どもを抱いたり仰向けに寝かせたりすることの重要性をこのように説明している。
ヒトに体毛が不要になったから無くなったのか、体毛がないことが親と子どもの関係を変化させたのかは分からないが、ヒトに体毛がないことは重要な事柄かもしれない。

(注1)フランス・ドゥ・ヴァール著、松沢哲郎監訳、柴田裕之訳「動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか」紀伊国屋書店 2017
 この本は大部ではあるが、読みだした止まらなくなるほど楽しい。初心者にもわかるような記述になっている。
(注2)大隈典子「脳の誕生―発生、発達、進化の謎を解く」ちくま新書 2017
おもしろいテーマではあるが、私のような初心者にはかなり難解。
(注3)松沢哲郎「心の進化をさぐる」2017 NHK出版
著者の飼育するチンパンジーの子ども(オス)、アユムの記憶力が人間よりも優れていることを実証したことは名高い。この本に解説がある。注1の本にも紹介されている。
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by takaminumablog | 2018-01-15 15:57 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)
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