同期現象にはわけある

スティーヴン・ストロガッツ著、蔵本由紀監修、長尾力訳2005「SYNC―なぜ自然はシンクロしたがるか」早川書房(ISBN4-15-208626-2)
自然にみられる同期現象を面白く解説した本に出会った。多数のホタルが同期して光る話、人のサーカディアン・リズム、ロンドンで建設された当時ゆらゆら揺れて通行禁止になったあのミレニアム・ブリッジの話など楽しい話題に満ち溢れている。理科系を自認する方には必読書として推奨したい。しかし内容は、比喩で説明してあるとは言え、カオス理論に関連する応用数学だ。400ページ以上をすんなりと読めるものではない。図は少しでてくるが、数式はまったく出てこない。数学的背景を知らない部分は結局分からなかったと白状するほかはない。
本の中でもその業績に関する話題がでてくる監修者の蔵本由紀が次のように書いている「若者の理科離れが懸念をもってしきりに語られる昨今であるが、本書のように優れた科学読物こそこの種の問題に対して絶大なる効果をもつのではなかろうか。同時に、翻訳書という形でしかこのような良書をめったに手にすることができないわが国の立ち遅れを、多少残念に思うのだが。」思わず、蔵本さん、そんなこと言ってないで、貴方のような方が本を書いてよ!と叫んでしまう。
最近話題のスモール・ワールド・ネットワークの話もでてくる。著者はスモール・ワールド・ネットワークを提唱した一人でもある。スモール・ワールド・ネットワークとは「世界中の人だれでも6段階でつながっている」ということ、同様な現象が自然現象や社会現象の中に見られることを提唱したものである。スモール・ワールド・ネットワークに関する本はいくつか出版されているが私は読んだのは以下の本だけだ。ウェブの構造の話が特に印象に残った。
アルバート・ラズロ・バラバシ著、青木薫訳2002「新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く」NHK出版(ISBN4-14-080743-1)
著者の共同研究者(あるいは教え子?)ダンカン・ワッツによって書かれた本も翻訳されているようなので読むべきかもしれない。
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# by takaminumablog | 2005-07-13 13:12 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

疑似科学としての精神分析

私はかねがねフロイトの開始した精神分析は疑似科学ではないかと疑ってきた。深層心理の存在は誰も証明できないもの、しかし存在しないことを証明することはほとんど不可能なものではないかと思っていた。確信をもって断言するには、勉強してみなければならない。しかし疑似科学を勉強するのはばかばかしいので、結論を保留した状態のままであった。ところが最近以下の本が目に留まった。
村上宣寛2005「「心理テスト」はウソでしたー受けたみんなが馬鹿をみた」日経BP(ISBN4-8222-4446-6)
この本の中にある死刑囚のロールシャッハ・テスト(インクのしみを見て何を連想するかを言わせるテスト)を3人の著名な心理臨床家(大学の教授、助教授、講師)が診断した事例が紹介されている。3人の心理臨床家は死刑囚がこけしやシャンペンを連想したのを男根表象への固執と解釈した。しかし実際は性的にはきわめて正常な、道を踏み外す前は成功した歯科医だった。心理臨床家の診断のおおはずれの事例が紹介されている。著者は心理臨床家の方が問題があるのではないかと皮肉っている。著者はグッバイ、ロールシャッハ!と言っているが、私はフロイトにもグッバイと言いたい。この本には、ロールシャッハ・テスト以外も血液型性格診断、矢田部ギルフォード性格検査、内田クレペリン検査のでたらめぶりが紹介されている。人の性格が簡単なテストで分かるというのはウソに決まっている。それを堂々と心理学の専門家が告発してくれた。
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# by takaminumablog | 2005-07-11 10:07 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

ダイオキシン猛毒説の誤り

今日、朝日新聞(ウェブ版)で「ダイオキシン濃度と子宮内膜症、日常摂取なら無関係」という記事を見かけた。そこで前に読んだ次の本を取り出して再読した。
渡辺正、林俊郎2003「ダイオキシンー神話の終焉シリーズ 地球と人間の環境を考える2」日本評論社(ISBN4-535—045822-3)
この本によるとダイオキシン猛毒説は誤っているらしい。1960年代から1970年代に多用された農薬(水田除草剤)には不純物としてダイオキシンを含んでいた。その農薬が使われなくなって環境に放出されたダイオキシンは大幅に減少している。しかし農薬から放出されたダイオキシンはゆっくりとしか分解されないため環境中に残っている。これに比べれば、ごみ焼却炉から放出されるダイオキシンは問題ではない。そもそも「ダイオキシンが猛毒である」というのも誤りらしい。そういえばユクライナのユーシェンコ大統領は選挙前に通常の1000倍のダイオキシンをもられたらしいが、大統領としての活動を継続している。
つぎの本には環境中のダイオキシンはごみ焼却炉よりもかって使われた農薬からきている旨が記述されている。
中西準子2004「環境リスク学ー不安の海の羅針盤」日本評論社(ISBN4-535-58409-5)
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# by takaminumablog | 2005-07-08 10:29 | 読書日記(環境問題) | Comments(2)