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ノーベル賞受賞者の精子バンク 

ディヴィッド・プロッツ(著)酒井泰介(訳)「ノーベル賞受賞者の精子バンク ー 天才の遺伝子は天才を生んだか」早川文庫
この本のタイトルを見て、かなり昔(20年前)に読んだ木村資生(著)1988「生物進化を考える 」(岩波新書)。この本は提唱者みずからが初心者向けに分子進化の中立説を解説した良書だ。しかし最後の章に議論を呼びそうな補足があった。人類は生物学的な意味での進化がとまった状態にあることを説明した上で、優生学の勧めとも採れる解説がついていた。優生学には「子孫を残すに相応しいと見なされた者がより子孫を残すように奨励する積極的優生学」と「子孫を残すに最相応しくないと見なされた者が子孫を残すことを防ぐ消極的優生学」がある。ノーベル賞受賞者のハーマン・J・マーラーが推奨した精子バンクの紹介がしてあった。
ところで肝心の表題の本はマーラーの影響をうけたロバート・グラハムという人がノーベル賞受賞者専用の精子バンク「レポジトリー・フォー・ジャーミナル・チョイス」(ジャーミナル・チョイスはマーラーの言葉である)を開設し大きな話題を呼んだ。その精子バンクのその後を追った物語である。
しかし本の副題にある「天才の遺伝子は天才を生んだか」というのは単行本のときにはなかったものを文庫本にするときに付け加えたものらしい。内容を表さないインチキのタイトルである。結局レポジトリー・フォー・ジャーミナル・チョイスからはノーベル賞受賞者の子どもは生まれなかったらしい。この結局精子バンクはいい加減な運営の後に閉鎖されたらしい。
 現在では精子バンクの人工授精により100万人の子どもが誕生しているらしいが、精子バンクまともな運営がなされているのだろうか?
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by takaminumablog | 2008-06-25 15:02 | その他の読書日記 | Comments(0)

再び「地震予知の科学」について

中国・四川大地震の後、「地震予知の科学」の書評が目に留まった。私が以前に書いたブログはこちら。 正直に言ってあきれた。評者は『大規模な地震は予知可能になった。ただし、「×月×日×時に震度×の地震がある」とまではいかないけれども。』と書いている。次の点を確認しておきたい。
(1)この本では「予知」という言葉を普通の日本語とは異なる意味で使っている。普通の日本語でいうところの予知はまだ不可能。
(2)地震には「プレートの沈み込みによってプレート境界で発生する地震」と「大陸プレートの内部で発生する地震」の2種類がある。岩手・宮城内陸地震は後者。「プレートの沈み込みによってプレート境界で発生する地震」についてある程度発生の仕組みが分かっってきた。しかし大陸プレートの内部で発生する地震については長期評価さえ大きな誤差を伴う。
(3)プレートの沈み込みによってプレート境界で発生する地震の一つである東海地震の予知を目指して「プレスリップ」の観測をしているが、「大地震発生前にプレスリップが検知できる」というのは仮説でしかない。そもそも「東海地震」だけが発生間近という説も誤りであった。正確な数字は知らないが40年間に1600億円を使ったらしい。(だれか正確な数字をご存知の方はコメントしていただきたい)私は無駄だったと思うが、異論もあると思う。(ほとんど車が走らない道路に比べれば微々たる物かもしれない)

中国は1975年に「地震予知」を成功させたことがある。中国は「予知」に肩入れしすぎたのではないか。日本も(地震メカニズムの研究は重要だが)「予知」が可能という前提は捨てるべきだ。
評者は「最近の天気予報はよく当たる」と書いているが本当だろうか。気象庁の公式見解のこちらを参照して欲しい。
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by takaminumablog | 2008-06-17 11:45 | 読書日記(その他の科学) | Comments(3)

時間のある人にお勧めの「時間」に関する本

「時間とは何か」というテーマについて考え出すといくら時間があっても足りない。時間に関する本は多いが、科学的な裏づけのない哲学にはまったく興味のない私にはチンプンカンプン。そんな中でこの本は出色。物理学の裏づけを持った時間論の解説。私が過去の読んだ時間に関する本の中で「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学」中公新書と比肩するくらいの名著。ぜひ皆にお勧めしたい。ただし理科系の人でないと難しいかな?
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by takaminumablog | 2008-06-07 16:53 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

ピークオイル論は正しかったのでは?

デイヴィッド・ストローン著 高遠裕子訳2008「地球最後のオイルショック」新潮選書
この本の帯には「温暖化よりもはるかに怖い真実 ピークアウトまで10年をきっている」と書かれていて、石油生産のピークが近いことに警鐘を鳴らしている。
一般にはピークオイル論は評判が悪い。ピークオイル論に対する批判にはいろいろある。一番低次元な批判は(だれも枯渇するとは言っていないのに)「石油は枯渇しません」というものだ。次に低次元な批判は「石油の価格が上昇すれば、技術も進歩して今まで採掘できなかった石油も採掘できるようになる」というものだ。しかしこの本を読めばそれは実証されていないということが分かるだろう。低次元な批判は横においておくとしても、エネルギー問題の専門家でさえもピークオイル論に懐疑的な意見が多いように見える。(専門家へのアンケート結果を見たわけではないのでなんともいえないが)
 それではなぜこんなに原油の価が上昇するのだろう。これに対して「昨今の価格上昇は投機資金の流入」と解説する記事を見かける。しかし将来の価格上昇が見込めないなら投機資金は流入するはずがない。
 アメリカは、「なぜイラク戦争を開始したか」は、歴史問題にするには近すぎて、まだ明確に答えが出ていない問題だ。日本のメディアは大きな声では言わないものの「ブッッシュが馬鹿で戦争がすきだから」という答えを用意しているようだ。しかし普通に考えれば、この本の著者が言うように「アメリカの支配者はエネルギー危機の近いことを予知していた」「石油の利権欲しさ」と考えるほうが普通だろう。
 どうもピークオイルが近いのを知らないのはわれわれ庶民だけのようだ。
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by takaminumablog | 2008-06-04 16:05 | 読書日記(環境問題) | Comments(0)