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昆虫食

野中健一2007「虫食う人々の暮らし」NHKブックス
私は好き嫌いなく、なんでも食べるほうであるが、まだ意識して昆虫を食べたことはない。漠然と「昆虫食は食物資源の乏しい地域で栄養補給のために行われているのかな?」と想像していたが、とんでもない誤りであった。狩猟採集民族においても昆虫は栄養補給というよりスパイス、ドレッシングに近いもののようだ。日本の昆虫食にいたっては食文化だけではなく、村おこし、コミュニティの結束をはかる手段にさえなっているようだ。
昆虫は大発生するときもあるが、まったく採れないときもある。食べるほど集めるには自然をよく知らねばならない。自然との共生を叫ぶ自然保護派は、ぜひ昆虫食を始めるべきだろう。
この本には昆虫食をする人々の様子が愛着をもって記述されている。この本をよめば一度蜂の子の瓶詰めでも買ってきて食べようかという気になること請け合いだ。関東では見かけたことはないが、愛知県豊田市や岐阜県恵那市のスーパーでは売っているらしい。イナゴは一缶500円、蜂の子は1000円というから結構高価だ。
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by takaminumablog | 2007-09-27 14:50 | その他の読書日記 | Comments(0)

「産む機械発言批判」を批判する

河野稠果2007「人口学への招待―少子高齢化はどこまで解明されたか」中公新書
皆が忘れかけている「産む機械」発言について感想を述べたい。柳澤厚生労働大臣(当時)が「女性は産む機械」と発言したと批判された事件があった。もう忘れた人はこちらの記事を読んで欲しい。
柳澤大臣は合計特殊出生率の意味を説明するためにこの発言をしたものだ。「女性の人権無視」などと批判した人々の知能レベルの低さにあきれ返ってしまった。
彼は女性=産む機械と発言したのではなく、喩えたに過ぎない。発言者の意図と切り離して言葉の綾を批判するのはおかしい。どこかの党首が「あたたかい国・日本」と発言したからと言って地球温暖化推進論者ということにはならないのと同じだ。
「喩えにしても言葉の選択が悪い」という反論があるかも知れない。しかしそう反論する人は合計特殊出生率という言葉の意味を知らないに違いない。この言葉の意味を知れば彼の比喩はけして突飛なものではないことがわかるだろう。「産む機械」というのはかなり適切な比喩である。上記の本から言葉の意味を説明した部分(p.68~p.69)を引用する。
合計特殊出生率は、最近もっともよく使われる指標である。これは簡単に言えば、女性の再生産年齢(15~49歳)のそれぞれの年齢別出生率を合計したものである。元来この指標は英語のtotal fertility rate の訳であり、直訳すれば合計出生率であるが、先に記した総出生率と混同されないためもあり、またそれぞれの年齢別は年齢別「特殊出生率」ともいわれ、それらを合計すると言う意味もあって、これまで「合計特殊出生率」と言ってきた。
ここで注意しなければならないのは、年齢別出生率の分母は女子人口であり、有配偶女子だけに限るものではないということである。つまり長所は各年齢階級の大きさは皆同じと考え、したがって各年齢階級の重み(ウェイト)は全部1であるので、この率が粗出生率のように年齢構成によって影響を受けないことである。もう一つの長所は、そこで示された年齢別出生率のとおりに子どもを生んだとして、一人の女性が再生産年齢15~49歳を通過する間に(つまり一生を通じて)産む平均子ども数を意味し、人口研究者以外の人にも理解しやすい指標となっていることである。
 
産む機械発言を批判する人たちは「15歳という未成年者を計算に入れるのはおかしい」、「有配偶女子だけに限定すべきだ」と言い出すかもしれない。
柳澤大臣が厚生労働大臣としてふさわしいひとだったかどうかは分からないが(注)、彼の「産む機械発言」を批判した人たちはその立場にふさわしくない人たちだ。マスメディアも批判者たちの知能レベルを批判するべきであった。
 
(注)大臣の発言は、「合計特殊出生率の低下の原因は結婚した女性が子どもを産まなくなったから」のように聞こえる。彼は問題の本質を理解していなかった可能性もある。
しかし、最近の新しい研究によると、1990年以降夫婦の子どもの生み方にも変化が生じている。近年の少子化は、結婚適齢期の女性が以前よりも産まなくなった効果が7割、結婚している女性が子どもを産まなくなった効果が約3割という数字を人口学者の廣嶋清志、金子隆一、岩沢美帆のそれぞれの研究が示している。だが、いずれにせよ、合計特殊出生率が2.1を恒常的に下回った出発点である1970年代中期から、今日の1.26という超低出生率時代にいたる過程で、適齢期の男女が結婚しなくなったことが日本の少子化の最大の原因であることは間違いない。

  p.164
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by takaminumablog | 2007-09-19 14:36 | その他の読書日記 | Comments(0)

日本海はなぜできたのだろう

斎藤靖二2007「日本列島の生い立ちを読む」岩波書店
以前伊豆の温泉に行った時、同行者に「伊豆半島は海洋プレートに乗ってはるか南方から流されてきた。日本列島にぶつかってくっついたものだ」などと説明したら、信じてもらえないだけでなく「お前はどうかしている!」というような顔をされた。私の説明のしかたは上手ではなかったかもしれないが間違ってはいない。 このように海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に海洋プレートの上に乗っていたものが沈み込まずに大陸プレートにくっついたものを付加体という。上記の本によると日本列島には、伊豆半島だけではなく、いたるところに付加体があるようだ。将来は小笠原諸島も付加体になるのだろう。ただし年間4~5cmとかいうから、かなり先の話ではあるが。 日本列島が付加体により成長していく話はプレートの動きを考えると分かりやすい。
しかし日本海の誕生の理由は不可解だ。以前は、日本列島は大陸と陸続きであったそうだ。それがなぜ大陸から離れたのだろうか。上記の本に古磁気から推定された2000万年前の日本列島の位置がのっている。
それによると、日本列島はほとんど中国大陸にくっつきそうだ。古磁気の研究によると2000万円前から1500万年前ころに日本海が広がったらしい。日本海の深海掘削の調査によっても日本海の誕生は2400万年まえから1700万年前と推定されるらしい。日本海がそのころ誕生したのはよいとして、その原動力は何だろうか。
上記の本によると、今も不明らしい。 われわれ庶民は「そんなことも分かってないの?」と驚くしかない。
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by takaminumablog | 2007-09-18 09:08 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)