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建設産業=政治産業

無駄な林道について書いたついでに建設産業についても、私の感想を書きたい。
篠原三代平2006「成長と循環で読み解く日本とアジア」日本経済新聞社
この本は、かなり専門的な内容で、私のような素人には負担であった。そんな中で第18章は「建設活動の国際比較―政治産業仮説は成立するかー」であり、とても興味深い内容であった。
他の国々に比べ倍近い日本の建設業の比重
 いま、わが国の「労働力調査」を利用して、まず就業者総数の中で建設業に従事しているものの割合を求めると、1955年4.8%、60年5.7%、70年7.7%、80年9.9%、90年9.4%、そして95年~2000年の平均が10.2%と急テンポの上昇を示したが、01年以降も9.9%、9.8%、9.6%と依然高い比重を示している(図18-1)。
 問題は、欧米諸国はこの比率が4、5%台で安定している国が多い中で、なぜ日本では突出した形でこの比率が高くなったかということにある。もちろん欧米でもこの比率がある時期に6~8%を示した国(たとえば48年~70年のイギリス(北アイルランド除外)、60年代の西ドイツ)がないことはない。けれども、この英独の比率も図18-1の下部に示されるように、65年以降ははっきりと下降過程に入っている。ただ、このグラフの上部で注目すべきことは、東アジアでは日本だけでなく台湾、韓国もまた日本に追随して高い比率に上昇するに至ったことである。

    p.281~282
この本には就業者数に続きGDPあるいは国民所得に占める建設業の比率が解説されている。就業者数と同様にこちらのほうも高い比率を示している。日本の建設業所得/GDPは多い年(90年)には9.8%、もあるが2000年7.4%、2002年6.8%、2003年6.7%と低下傾向。アメリカは4、5%で長期安定。イギリスは多い年は7%くらいあったがその後低下傾向、などが図で示されている。この章の最後の文は次の通り。
しかし、現在はこの高速道路の建設続行にはストップがかけられ、道路公団自身も民営化と解体の方向をたどらざるをえない状況にある。その意味で、この90年以降の動きは、長期不況と政治産業的色彩の崩壊という二重の影響下にあると考えることが正しいと思われる。

日本では、政治的目的のために国民の税金と環境を犠牲にして建設活動が行われてきた。最近、環境保護を名目にした公共事業の話が出てくるようになった。お人好しの環境保護派が、古い政治力だけでは食っていけなくなった建設業界に丸め込まれているに違いない。
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by takaminumablog | 2007-05-29 17:02 | その他の読書日記 | Comments(0)

林道は何のためにあるのか

今回は読書感想ではなく、私の感想。
最近、「林道談合」が話題になっているせいもあり、表題の疑問が思い浮かんだ。疑問に答えてくれる情報源を探したが、一般向けの解説書は見つからなかった。唯一見つけたのは林道評論センターをいうウェブサイトだ。所長は内容について「情報についての信頼性・保証等は一切ございません」と宣言されているが、なかなか面白い。
 表題の疑問に対して、普通の人は「木材を運んだり、林業労働者が移動に使う」と思っているだろう。たしかに私の若い頃(数十年前)は林業関係の車によくであった。空荷になった軽トラックにも乗せてもらった。しかし最近林業に関係した車に出会うことはほとんどなくなった。林道で出会うもの林道の保守作業と登山やバイクなどの広い意味での観光。ただし観光が目に付くのは、私自身が観光目的で林道を利用しているからだろう。おそらく林道とは林道保守のために用いる道路というのが実態であろう。(この仮説を実証すべく林道の交通量調査を探したが見つからなかった。やっているのだろうか)
 かって林道を林業だけを口実として林道を作りつづけることが限界となり林業以外の産業振興や観光などの地域振興も目的とした「スーパー林道」(正式名称は特定森林地域開発林道)なるものが作られた。1965年から1990年の間に1,179Kmも作られたらしい。スーパー林道とは分かりやすく表現すると、林業にはほとんど使われない林道である。(現在は特定森林地域開発林道という区分けはなくなっているが、個々の林道にはスーパー林道の名を残すものがある)
 以前もブログに書いたことがあるが、林業従事者の数も考慮しないで過剰に針葉樹を植林し、林道を作って自然を破壊している。官製談合も問題ではあるが、林道が多すぎるのはもっと問題ではないのか。
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by takaminumablog | 2007-05-25 09:56 | 雑感 | Comments(0)

生命はどこで誕生したのか

平朝彦他2005「地球の内部で何が起こっているか?」光文社新書この本はタイトルにある疑問に直接答を与えるものではない。「地球の内部で何が起こっていのるか?」を解明するため、海底を掘削するプロジェクトの紹介である。日本が主導して行っていることは誇らしい。
 地球上の生命がどのように誕生したかを想像することは楽しい。このプロジェクトからそれが解明されるかもしれない。通説では「生命は、約38億年前、海の中で生まれたとされています」(「植物の生存戦略」朝日選書の第1章プロローグより) 従来は、最初の生命は、潮だまりや暖かい池のなかで、落雷、稲妻などをきっかけとして生まれたのではないかと考えられてきた。(私の学生時代にはそう教えられた。生命はたった一度何等かの偶然により誕生したという無責任な説明も聞いた) しかし、近年は、火山付近の煮えたぎる熱泉や海底の熱水噴出孔といった熱水のなかで誕生したのではないかと考えられるようになってきた。
最近は熱水の存在する場所として、海中ではなく、地下が注目されるようになった。この本の212ページに海底掘削により得られて地層の単位体積あたりの微生物の細胞数を示す図がある。その図によると海底下1000mくらいまで海水中よりも細胞数が多いという結果が示されている。この結果を見ると「生命は地下で誕生したのではないか」と思えてくる。ひょっとしたら現在も新しい生命が誕生していてもおかしくないのでは?とも想像したくなる。
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by takaminumablog | 2007-05-23 09:00 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

もし日本が核攻撃をうけたら

高田純2007「核爆発被害」中公新書
 核武装論を唱える人がいる。もちろんそれに対する反対論もある。このような議論は「将来日本が核攻撃を受けるかもしれない」あるいは「核攻撃をするという脅しをかけられるかもしれない」ということが出発点になっている。核武装論は核攻撃を未然に防ぐ方法として議論されている。日本の核武装の是非について議論することは悪いことではないと思うが、なぜか、「日本が核攻撃を受けたら何が起こるか」という議論はあまり見かけない。そんな中で何冊かの著書を出している著者は例外だ。
 核攻撃を受けた場合の対策は必須だと思うのだが、政府のどこかで検討されているのだろうか。もし東京の上空で核爆発があると電磁パルスにより多くの通信機器に障害が発生し大混乱になるらしいが、対策はあるのだろうか。著者によると核攻撃をうけて後、住民を避難のため屋外に連れ出すことは大変危険らしいが、自治体で防災にたずさわる人は知っているのだろうか。
 核武装論に賛成する人も、反対する人もぜひ読んで欲しい。念のため書き添えると著者は核武装の是非や政治的な問題に全く触れていない。議論の前に事実の認識が必要である。
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by takaminumablog | 2007-05-21 15:23 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

定住革命

西田正規2007「人類史の中の定住革命」講談社学術文庫
通説では「人類は何百年もの間狩猟採集で生計を立ててきたが15000年ほど前に農耕技術を獲得し、農耕により生計を立てるようになった。農耕は必然的に定住をもたらした」と説明されている。この本は「農耕技術獲得以前にも定住が存在した。定住が農耕をもたらした」と主張する。その事例として日本の縄文時代の遺跡を説明している。面白い主張だ。しかし事例が日本に偏りすぎているため、「人類史上、定住が先」というのは根拠薄弱のようにも思える。
 この本の終わりの2章は定住革命という話題からはずれ「手形動物の頂点にたつ人類」「家族・分配・言語の出現」である。「手形動物・・・・」の中に面白い記述がある。
人類が大きな脳を持ちえたことの古典的説明に、直立二足歩行によって頭蓋が下から支えられることになり、これを横から支える四足獣より重い頭を支えやすい、という理解があった。このような力学モデルによる説明が全くの誤りであることは明らかである。たとえばシカの角は、重いといっても1.5キログラム程度しかない人類の脳よりはるかに重い。重い脳を支えるだけのことなら、 四足獣できるのである

最後の章「家族・分配・言語の出現」に関する記述はほとんど説得力がない。人類がいつからどのように言語を使い始めたかを推理させるような証拠はまったくない。その中で著者の推理を言われても信じるわけには行かない。動物の言語やコミュニケーションについても私たちはほとんど知らない。チンパンジーやボノボは高いコミュニケーション能力を持っていることは確かであるが、それがどのような手段でなされているかすら、今のところ解明されていない。
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by takaminumablog | 2007-05-13 15:06 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)