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原子力発電―9 放射線被曝の遺伝的影響

ブログに「適当X」さんからコメントを頂いた。私があまりにも簡略な記述をしたため誤解されたかもしれない。
一般には「放射線被曝するとその子孫にまで遺伝的影響(ガンになりやすい)が及ぶ」と信じられているようだ。本当だろうか。前にも紹介した面白い本「世界の放射線被爆地調査」を引用しよう。まず、どの程度被曝した場合にガンになるかについて見てみよう。
放射線被曝により誘発される発ガンは、線量に比例し、被曝後、長い年月の潜伏期を経て症状が現れる。この種のガンには、甲状腺ガン、白血病などがある。被曝後のガン発生率は、広島・長崎原爆被爆者の調査から、500ミリシーベルト以上の被曝をした場合、その被曝線量に比例してガンの発生率が増加することが分かっている。しかし200ミリシーベルト以下の被曝者にはガン発生率の増加は認められていない。発ガンには、放射線以外の要因があって、わが国では4人に一人がガンで亡くなっており、低線量の放射線被曝による発ガンを確認することは困難である。もし数十ミリシーベルトの線量を読者のあなたが被曝した場合に、それによって将来ガンになる確率は、その他放射線以外の因子でガンになる確率よりも低いことになる。

つぎに放射線の遺伝的影響についてみてみよう。
放射線の遺伝的影響は、これから子どもをつくる人が生殖腺に放射線を受けた場合に発生する確率をもつ影響である。ただし広島・長崎の原爆生存者の調査では、この遺伝的影響は見つかってはいない。見つかっているのは、ショウジョウバエやマウスなどを用いた実験からである。ヒトへの影響に関しては、この生物実験の結果から遺伝的影響を推定しているだけである。もしも読者のあなたが10ミリシーベルトの線量の被曝をしたとすると、将来あなたの子孫に遺伝的影響が現れる確率は10万分の六と推定される。100ミリシーベルトならば、その確率は1万分の六となる。

ここに出てくる10万分の六という数字と喫煙のリスクを比較してみよう。こちらの資料の「14.喫煙と肺ガン」によると20歳~24歳で喫煙を開始した人の肺ガン死亡率は10万分の114で非喫煙者よりも10万分の90も高い。全ガンを比較すると10万人あたり224.5も高い。
放射線は確かに怖い。しかし低レベルの放射線は喫煙に比べれば大騒ぎするほどではないだろう。
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by takaminumablog | 2006-06-06 12:24 | 読書日記(環境問題) | Comments(0)

原子力発電―8 「核燃マネー」

朝日新聞青森総局2005「核燃マネー 青森からの報告」岩波書店
青森県といえば「核」を思い出すくらい有名になってしまった。青森県もなにも好きで「核」を受け入れているわけではないだろう。この本の冒頭に電源3法交付金を活用して作られた公共施設(16個)の一覧表がある。事業費を合計してみたら101億9千万円になった。
(大部分は行楽、観光施設で産業振興に関すると思われるものは2個)一番高額なのは六ヶ所村文化交流プラザの32億8千万円だ。この本には書かれていないがこのプラザ(スワニーというらしい)には日本原燃が寄付したドイツ製ピアノ「スタインウェイ」があるそうだ。(「そんな立派なピアノ誰が弾き、誰が聞くの?」と言ったら六ヶ所村の人に殴られるかな)
核燃マネーが青森県をだめにした、というトーンで書かれていて、核燃マネーが深く浸透していることはわかった。しかしよく考えてみると青森県が危機に立っているのは核燃マネーのせいではない。核燃マネーがなかったら青森県はとっくに財政再建団体に転落していたのではないだろうか。仕方ないので「核」を受け入れたというべきだろう。もともと朝日新聞青森版に連載されたものなので無理な注文かもしれないが、もう少し核燃マネーに頼る県や県民の体質に切り込んでほしかった、というのが私の感想。
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by takaminumablog | 2006-06-05 12:35 | 読書日記(環境問題) | Comments(0)

原子力発電-7

古い本で申し訳ないが、別に購読を勧めているわけではない。(注)
清水修二1999「NIMBYシンドローム考」東京新聞出版局
この本に次のような記述がある。
原子力発電について公に何事か語るとき、この国ではいささかの覚悟がいる。信仰告白にも似て、原発への賛否についてひとたび旗幟を鮮明にしてしまえば、その日から世間の見る目が変わる。何もかもわかりあえた間柄のように親しげに声をかけてくれる見知らぬ他人が出現するかと思えば、きのうまでの親しさが嘘のように急に冷淡な口の聞き方になる人もいる。私的な会話においても、原子力発電はどちらかといえば避けたほうがいい話題だ。

どうしてこんなことになってしまったのだろうか。原子力発電に関しるもっとも大きな意見の相違は安全性であろう。私は、原子力発電の安全性の通念はおかしいと思っている。原子力発電が「絶対」安全ということはありえないだろう。小規模な事故は必ず起こる。(原子炉の専門家が赤ちゃんの寝小便みたいなものと言っている)しかし原子力発電反対派の人たちとマスメディアは小さな事故であっても「気の緩み」が事故を引き起こしたと騒ぎ立てる。(たとえ気の緩みや人為的なミスがあったとしても大事故にならない仕組みこそが重要のはずである)これに対して原子力発電推進する人たちは「絶対安全」です、と見え透いた嘘をいう。こんな状態が続く限り安全文化は進歩しないであろう。

(注)NIMBYというのはNot In My Backyardの略で必要性はわかるがうちの裏庭には困るという迷惑施設のことをいう。原子力発電関連施設は典型的なNIMBYで、著者は地方や僻地にもNIMBYを拒否できると主張しているようだ。地方の立場を弁護する気持ちは分からないでのないが、それと引き換えに莫大なお金を得ている事実を忘れてはいけない。この本は古いこともあり、ところどころ科学的には正しくないことが議論の前提となっているので薦めるわけにはいかない。(ダイオキシン猛毒説、被曝が子孫に影響することなど)
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by takaminumablog | 2006-06-02 16:02 | 読書日記(環境問題) | Comments(1)