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心とは何だろうか

「心とは何だろうか」ということが気になりだして、いくつかの本を読んでいる。
ジュリアン・ポール・キーナン著 山下篤子訳2006“うぬぼれる脳―「鏡のなかの顔」と自己意識”日本放送協会出版
著者たちは「鏡のテスト」を用いて、霊長類、人の自己自覚(セルフ・アウェアネス)を調べている。「鏡のテスト」とは調査対象(人または動物)が気づかないうちに顔などに印をつけ、鏡を見せたときに気づくかどうかを調べるものである。結果はつぎの通り。
人:2歳弱でセルフ・アウェアネスが出だす
ボノボ:セルフ・アウェアネスあるらしいがこの本には詳しく書いてない
チンパンジー:成長した固体にはセルフ・アウェアネスがある
ゴリラ:不明
オランウータン:あるらしい
イルカ: あるらしい
サル:ない
今、心理学で盛んに取り上げられる「心の理論」(注)とセルフ・アウェアネスは密接に関係しているようだ。確かに他人の心を認識するためにはまず自己の心を認識する必要がある。本を読み終えても「心とは何か」まだ分からないが、昔、言われていた言語と心を強く結びつける考え方(たとえば「言語がなければ考えることができない」という主張)は誤りであるということだけは確信した。
(注)「心の理論」についてウェブで検索すると多くの記事が出てくる。多すぎて分かりにくいかもしれない。こちらの誤信念課題に関する説明を参照するとよいかもしれない。
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by takaminumablog | 2006-04-29 18:00 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)

地球温暖化と黄砂の関係は?

今年も黄砂の季節がやってきた。黄砂が地球温暖化に対してどのような影響を与えているのかはっきり分かっていないらしい。IPCC2001のレポートの中では「ミネラルダスト」と呼ばれているが、その放射強制力は正(プラス、暖める側)なのか負(マイナス、冷やす側)なのかも分からない記述になっている。気象庁の解説記事によると全体としては弱い負の効果があるようだ。(しかし産業革命以降、土地劣化などにより黄砂がどの程度増えたかはわからない)
我々素人は「地球温暖化で大騒ぎしているのだから、さっさと調べたらよいのに!」と思ってしまう。しかしつぎの本を読むと黄砂がなぜ難しいのか良く分かる。
岩坂泰信2006「黄砂―その謎を追う」紀伊国屋書
黄砂は飛んでいる間に酸性雨の原因物質(硫黄酸化物、窒素酸化物)を吸着しているらしい。飛んでいる間に吸着したことを証明するためには、発生地点では無かったことを示さなければならない。黄砂そのものは電子顕微鏡でよく見えるが、吸着した熱に弱い硫黄酸化物や窒素酸化物は電子顕微鏡では見るのは難しい、など苦労話が書いてあって面白い。
話が少しそれるが、地球温暖化に関連して地球における二酸化炭素の循環が話題になっている。その炭素循環にプランクトンが重要な役割を演じている。海中に溶け込んだ二酸化炭素はプランクトンが取り込んでその骨格などをつくる。やがてそのプランクトンが死んだとき遺骨が海底に沈殿する。黄砂は日本上空を越えて大部分は太平洋に落ちる。(グリーンランドまで飛ぶのもあるらしいが)落ちた黄砂はプランクトンの餌になる。黄砂の落下がなければ生存できないような陸から離れたところでもプランクトンが生存できるらしい。 サハラ砂漠の砂塵が貿易風に乗って大西洋に飛来する。砂塵が良く通る海域ではプランクトンの発生が良く見られるそうだ。気象庁の解説記事(前出)によると「プランクトンから発生するDMS(ジメチルサルファイド)は大気中で硫酸エーロゾルとなり、硫酸エーロゾルは海洋上の雲の雲核となる」そうだ。
要するに「黄砂の間接的影響を考え出したらきりがない」「まだ良く分かっていない」ということらしい。
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by takaminumablog | 2006-04-27 11:02 | 読書日記(環境問題) | Comments(0)

東海地震は予知できるか

私は、かねてから「そもそも地震予知なんて原理的にできないのではないか」と疑ってきた。しかしつぎの本を読んで、「ひょっとしたら将来地震予知が可能になるのではないか」と考え直し始めた。
川崎一郎著「スロー地震とは何か-巨大地震予知の可能性を探る-」日本放送出版協会
地殻にたまったエネルギーがひずみとして蓄積され、それが数秒~数分という短時間に一気に解放される現象が地震である。しかし数日~数ヶ月に渡ってひずみが解放されるスロー地震も頻繁に起こっているらしい。(このような地震は用語さえも混乱していてスロースリップ・イベントなどとも呼ばれている)著者は「何回か発生するスロー地震の一部が加速されて大地震となる」という作業仮説を示している。この仮説が正しければ、スロー地震を正確に検知することにより予知が可能になるかもしれない。
 この本は「高校生程度の知識」を前提に書かれているらしいが、説明していることはとても難解で2、3度読み直す覚悟で手に取る必要がある。しかしその価値はある。
 将来の地震予知には希望が感じられるが、現時点では無理だろう。大規模地震特別処置法が前提とするような断定的な地震予知が可能であるとは到底思えない。(注)警戒宣言がだされたのに地震が起きないなんてことはないのだろうか。もし警戒宣言が出されると、生産活動の制約、交通の停止、物流への制約に関し一日あたり1702億円の被害がでるらしい。
(注)事前の予知が可能であるということを前提にした施策には批判が多い。警戒宣言がだされないまま、地震が発生することもあるだろう。たとえばこちらを参照。
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by takaminumablog | 2006-04-22 16:31 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)