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こうして心理学は疑似科学から科学になった

次の本はアマゾンの書評ではあまり高い評価を得ていないようだが、私にとってはとても面白い本であった。
ローレン・スレイター著、岩坂彰訳「心は実験できるか-20世紀心理学実験物語-」紀伊国屋書店(ISBN4-314-00989-6)
著者は「はじめに」の中でつぎのように書いている。
19世紀末、心理学の祖と考えられているヴィルヘルム・ヴントが世界初の心理学実験室、つまり計測を専門とする実験室を開設した。こうして科学としての心理学が誕生した。しかし本書の実験が示すように、心理学は逆子の奇形児として生まれた。それは科学であるとも、ないともつかない怪物だった。それから100年。怪物が何に成長したのか、この本はその疑問に答えるものではないが、スタンリー・ミリグラムの電気ショック実験、ブルース・アレキサンダーの依存症ラット、ダーリーとラタネの部屋に煙を出す実験、モニスのロボトミーといった実験群を扱う中で、この本はたしかにその難問に取り組んでいる。
p.12~13
心理学について多少読んだことがある人は知っている有名な実験が多く取り上げられているが、それにまつわる物語と著者の本音が書かれていて面白い。著者は実験を考え出した心理学者の心理をのぞきこもうとしているようだ。その実験について予備知識がなくても理解できるように書かれている。ただし「フェスティンガーの認知的不協和実験」の節に取り上げられている事例はあまりにも極端なため、認知的不協和について知らないと分かりにくいと感じた。これは私が日本人だからかもしれない。著者も書いているが東アジアの人はアメリカ人ほどには合理化欲求が強くないらしい。
この本で取り上げられた10の実験にはロボトミーを筆頭に倫理的に問題のあるものが含まれている。つまり心理学は少なからず倫理を犠牲にして一応科学の仲間入りをしたのだ。それでもまだ疑似科学のにおいは完全にとれてはいないと感じるのは私だけだろうか。
しかし日本語訳につけられたタイトルはよくない。(英語のタイトルを訳すと「スキナー箱を開けて」)心理学についてまったく読んだことがない人を読者に取り込むためにつけられたタイトルであろうが、そのような人には著者の気持ちが理解できないだろう。
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by takaminumablog | 2005-10-29 12:45 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)