(1)河野稠果2007「人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか」中公新書
(2)大泉啓一郎2007「老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき」中公新書 1972年、ローマクラブが「成長の限界」で、人口が幾何級数的に増え続けることを前提にした警鐘を発表した。この警鐘があまりにも印象的であったためか、今でも人口増加の危機を信じている人が多いように思う。しかし(1)によれば、人口が多産多死から少産少死に向かうことは人口学のグランドセオリーであるといわれるくらい広く見られる現象らしい。 この変化が急激に起こると生産年齢の割合が増加し経済成長がおこる。このことを「人口ボーナス」という。やがて生産年齢の人々が現役を引退するころになるとそれも終りを告げる。20世紀後半日本の目覚しい経済成長のかなりの部分が人口ボーナスであった。現在の日本は、多少の蓄えはできたが、ボーナスを使い果たしてしまった。「人口ボーナス」という言葉ほどポピュラーではないが「人口オーナス」という言葉もあるらしい。上記の本(2)には人口オーナスという言葉は使われていない、単に高齢化と表現されている。 日本に引き続きNIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)でも目覚しい経済成長が見られるが、その原動力も人口ボーナスだとすれば、そう長くは続かないことになる。上記(2)によれば、2010年から2015年には終りになる。中国についても人口ボーナスは理論上、2010年~2015年には終りとなるらしい。ボーナスを使い果たした時点でどれだけ蓄えがあるかは大きな問題だ。人口という視点からみると、アジアの将来はあまり楽観できない。
by takaminumablog
| 2007-11-16 09:04
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