有人宇宙開発に科学的意義があるだろうか

最近、日本人宇宙飛行士を英雄扱いする報道が多い。スペースシャトルはチームプレーで運行しているもので宇宙飛行士に日本人が含まれていることがそんなに大きなニュースなのだろうか。二度も大きな事故を起こしているスペースシャトルを礼賛するような報道振りも疑問だ。そこでスペースシャトルを批判したつぎの本を読んでみる。
松浦晋也2005「スペースシャトルの落日 失われた24年間の真実」エクスナレッジ
(ISBN4-7678-0418-3)
「・スペースシャトルは宇宙船として巨大な失敗作である。コンセプトから詳細設計に至るまで無理と無駄の塊だ。・シャトルの運行が続いた結果、宇宙開発は停滞した。・スペースシャトルに未来があるとだまされた世界各国は、シャトルに追随し、結果として宇宙開発の停滞に巻き込まれた。」(p.6)と著者は主張している。私にはこの本の主張を評価するほどの知識はないが、2度も人身事故を起こしているスペースシャトルが失敗作であることは誰でも認めるであろう。航空・宇宙の専門家である著者は宇宙開発の遅れを取り戻す必要性を主張しているが、私は賛成できない。そもそも有人宇宙飛行にどんな科学的意味があるのだろうか。宇宙には(1)無重力(2)地球表面の大気がないため宇宙がよく見える、という二つの特徴がある。このうち無重力の研究はたいした意義はないだろう。無重力状態での結晶析出などが研究されてきたが目立った成果はなさそうだ。(一方超高圧状態からは未知の鉱物の生成が確認されている)無重力状態の生物への影響を研究することにどんな意味があるのだろうか。生物はその進化の歴史を通じて無重力を経験したことはないはずだ。宇宙めだかの研究など税金の無駄遣いだ。結局宇宙飛行の意義は宇宙観察に限られる。その研究をするためなら何も有人飛行をする必要はない、無人にすれば費用は大幅に削減できるし、観測したい天体に近づくこともできる。
宇宙を研究することは地球を研究することに比べて特別価値があるとも思えない。つぎの本を読むと地球内部の研究の意義がよく分かる。
平朝彦ほか2005「地球の内部で何がおこっているか」光文社(ISBN4-334-03314-8)
地球内部探査という研究が日本主導で行われていることは大変誇らしいことである。
SF映画を見すぎた人は将来地球が住めなくなったときに、新しい居住天体が必要だというかもしれない。もしそれが可能であれば、宇宙ではなく地球上の、現在は人が住めない地域に住めばよい。そのような目的のために米国でバイオスフィア計画という実験が行われたことがある。地球上に閉鎖した空間(巨大な温室)をつくりエネルギー以外はすべて自給自足する実験である。もちろん酸素や二酸化炭素の循環は厳密に設計されたはずであった。しかしこの実験は酸素不足のため一年強で失敗に終わったそうだ。(「地球の内部で何が起こっているか」p119)閉鎖空間で自給自足する技術は地球上でさえ完成していない。
 有人宇宙飛行の本当の意義は科学ではなく軍事にあるのだろう。一時、米国のスペースシャトルで他国の軍事衛星を捕獲することが検討されていたらしい。(「スペースシャトルの落日」p.115)日本が軍事的理由から米国にお付き合いしなければならないのなら、なるべくお金のかからないように細々とやってほしい。マスメディアの報道も控えめにしてほしい。あたかも科学的意義があるようなことを言って小学生を巻き込んだりすることはやめてほしい。
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by takaminumablog | 2005-08-06 09:17 | 読書日記(その他の科学) | Comments(0)
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