グレアム・アリソン著 秋山信将他訳「核テロ-今ここにある恐怖のシナリオ」日本経済新聞社
今回はとても怖い話。 ソ連崩壊のとき核兵器の紛失はなかったのであろうか。公式には「ない」ことになっている。しかしソ連の原子力潜水艦(少なくとも四隻)が合計40個の核兵器を装備したまま海中に沈没した。地上でも核兵器の紛失はあったのではないかと疑いたくなる。核兵器は巨大なものという先入観があるが、小さい核兵器はバックパックで、一人で持ち運べるくらいの大きさだということをこの本で知った。 私たち素人は「核兵器製作には高度な技術を必要とする」となんとなく思っている。しかしそれは正しくないらしい。原料(たとえば高濃縮ウラン45Kg)があれば比較的簡単にガンタイプの核兵器が作成可能らしい。 この本は散々恐怖をあおった後、次のような対策により核テロを防止することは可能であるという。 (1)管理の緩い核(ルーズ・ニューク)を許さない (2)新たに生まれる核を許さない (3)新たな核保有国を許さない この本にはそれぞれについて詳しい解説がある。(3)については“現在の八つの核保有国―アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタンおよびイスラエル―の下に線を引き「それ以上は許さない」と明確に宣言することだ。北朝鮮は「新たな核保有国を許さない」政策への決定的な挑戦となっている。現在の計画が中断されなければ、北朝鮮はすぐに8個程度の核兵器と、年間12個を製造できる施設を持つことになるであろう。”と書かれている。しかしこの本の原著は2004年に出版されている。2006年の今も核テロ防止が可能かどうかわからない。 国家が他国に核攻撃を仕掛けるためには報復攻撃をうけることを考慮しなければならない。しかしテロリストは一発の攻撃で充分だ。報復攻撃しようにもその存在さえわからない。たとえ潜んでいる国が分かったとしても報復攻撃は不可能である。 今、日本のメディアや政治家は「より強い圧力を北朝鮮にかけるべきだ」と主張しているようである。しかしあまり強い圧力をかけると北朝鮮が核兵器をテロリストに売り渡すという可能性はないのであろうか。
by takaminumablog
| 2006-07-09 15:53
| 読書日記(その他の科学)
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